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 毎年8月16日は鳥取県岩美町・岩井温泉の灯ろう流しに参加、河原で演奏を行う。昨年は、記録的な豪雨により川が増水したため、残念ながら開催できなかった。今年は、無事開催できて良かった。ほっとしている。

 準備のため、夕方5時頃に現地に行ってみると、テントが見当たらない。河原にコンパネのステージだけがあって、露天の状態。川の上流、山の方を見上げると、怪しい雲も見える。これまでの経験から、天気予報はあてにはならない。風も出てきたし、これはマズイと感じた。

 準備を一時中断し、主催者の一人に電話で「(当初の打ち合わせ通り)テントを張ってください。」とお願いをして、張っていただくことができた。また、状況を見て、地元の方でテントの手配について別の方に電話をしてくれた人もいた。ただただ、迅速な対応に感謝する。主催者は天気予報「晴れ」を鵜呑みにしていたらしい。テントが無理ならこのまま帰ろうと思ったが、演奏ができるほうがいい。それが幸せだ。

 結局テント張りのため時間を奪われてしまった。午後6時から準備を始める。午後7時に最初の灯ろうが流れるため、準備とリハーサルが1時間しかない。それでも10分前にはリハーサルを終えて、時間を待つ。日が暮れ始め、山の上に鳥居の形をした明かりが灯る。美しい。

 今回は、ぼくのクラリネットの演奏から始めた。最初は、軽いポップな、どこかで聞いたような耳になじみのある曲。人によっては心地よく、懐かしい曲に思えたらいい。そういう選曲だった。伴奏は谷口尚美さんの電子ピアノ。「Close To You」「This Guy’s In Love With You」

 3曲目には、ルーマニア出身の作曲家チプリアン・ポルムベスクの「望郷のバラード」を演奏した。日本では、バイオリン奏者の天満敦子さんの演奏が有名だ。ぼくもコンサートで聞いたことがあった。原曲はバイオリンのために書かれた曲だが、印象的なメロディ・ラインだけを残して、クラリネット曲として心を込めて演奏した。

 「What A Wonderful World」「Stardust」ここまでは、マイクではひとことも喋らず演奏を続けた。薄明かりの中で、人の姿が例年よりも少なく感じる。盆休みが終わり、今年は日曜日の夜の開催となった。お盆に帰郷していた人の中には、県外の日常の待つ家路についた人もいただろう。そうした人々の姿、何気ない日常の平和を思いながら、演奏をした。川面には、少しずつ、灯ろうが流されていく。子どもが描いたような絵が見えるものもある。

 「星に願いを」からは、クラリネットを置いて、オカリーナで演奏した。「広い河の岸辺」は谷口さんの弾き語りの歌に合わせて、オカリーナを吹く。日がすっかり暮れて、この辺りから、徐々に曲の合間に簡単なひとことをつないでいく。あるときは、灯ろうが二つ並んで流れていくのを見た。まるで人が寄り添っているように見えた。そういう印象的な話をぽつりぽつりとアドリブで加える。

 これまでぽんかん。のステージでは、トーク用の台本を一度も書いたことがない。他の人のステージの手伝いで、そうした台本を書いても、実は役に立たないことを経験したからだ。台本というのは、何十人ものチームでプロジェクトを作る際に仕方なく作るものだと思う。最初に終了時間を決めておいて、曲数と曲順だけを組み立てる。予定時間を大幅に変えてしまったことはない。今回も、ちょうど午後8時に最後のあいさつを終えた。その方がうまくいく。これは誰でも当てはまることではない。ぽんかん。は、そうするという話だ。

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 オカリーナ奏者・宗次郎の「根尾の夏風に吹かれて」。沖縄ソングとして、「芭蕉布」と続き、山田耕筰作曲の「この道」「赤とんぼ」を演奏した。

 ここで、ピアノは谷口さんの息子さんに交替していただいて、谷口さんの歌、「アイ・ドリームド・ア・ドリーム」「スタンド・アローン」と続く。ぼくは完全にステージを離れ、聴衆の一員となる。心地よくて、このままずっと聞いていたい。

 最後にオカリーナ・ソロで「故郷」を演奏する。こういった構成であった。終了後は、何度もおじぎをする。

 いい演奏ができたと思う。そこで聞いた人、たった一人でも、音楽のちから、パワーを持ち帰ってもらえるなら、それがなによりだろう。音楽は主役じゃなくてもかまわない。

 日が暮れて、途中から、暗闇の中から拍手をいただく場面が増えてきた。演奏後に声をかけていただいた方も多くいて、実感を確かなものにしてくれた。また、来年、来ます。

◆この灯ろう流しは、2000〜2002年ころ、岩井温泉の地元の方々によって、古くからある風習を形を変えて継承していこうということから始まりました。演奏に際しては、温泉組合の皆様、岩井屋(いわいや)さんにはたいへんお世話になっています。岸本みゆうが初めてここで演奏したのは、2004年。それまでは地元のフォークバンドが演奏していたこともありました。2005〜2006年ころから、ぽんかん。で演奏するようになりました。歌とオカリーナの音色がいちばんぴったりくる場所だと実感しています。

◆上記の写真は、岩井温泉・明石家(あかしや)さんのホームページから拝借しました。

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音楽ライブユニットぽんかん。